株式会社サイバーエージェント
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業種
インターネット広告・メディア・ゲーム事業
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課題・要望
生配信クォリティの向上
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製品・サービス
データセンター
左から株式会社AbemaTV 開発局 コンテンツ配信チームの山中勇成氏、株式会社サイバーエージェント CIU Studio Team Studio Network Specialistの篠原雅和氏、株式会社サイバーエージェント スタジオ戦略室 テクニカルディレクターの近藤信輝氏
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ABEMAを変える「SUPERBIRD」プロジェクトとデータセンター活用
~映像配信のさらなる安定と品質向上へ~
ダウンロード数6800万超、急成長する「ABEMA」
1998年の会社設立から20年以上を経て、サイバーエージェントは今も急成長を続けている。メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業が同社の三本柱。メディア事業の主力は、"新しい未来のテレビ"として展開する動画配信事業「ABEMA」(アベマ)である。
ABEMAは多彩なジャンルをカバーする約20チャンネルを展開、24時間365日の配信を続けている。2016年4月の開局以来、5年余りでABEMAのダウンロード数は6800万を突破。WAU(Weekly Active Users)は1500万人を推移している状況である。とくに、スポーツやニュースなどライブコンテンツの人気は高いようだ。
ただ、生番組を高品質かつ安定的に届けるのは容易なことではない。しかも、最新のテレビやスマ―トフォンを利用するユーザーの期待値は上がり続けている。現在と同じ画質では、1年後のユーザーを満足させられないかもしれない。野球やゴルフなどのスポーツ配信が増えれば、これまで以上に高いクオリティーの映像配信を求められるだろう。
こうした課題意識をベースに、サイバーエージェント内でインフラ強化に向けたプロジェクトがスタートした。それが「SUPERBIRD」である。
SUPERBIRDの中核を担ったのは3人のメンバーだ。「SUPERBIRD」プロジェクトの立案者でありABEMAの開発局でコンテンツ配信を担当する山中勇成氏、3事業のインフラを横軸で統括するCIU(CyberAgent group Infrastructure Unit)のマネージャーである篠原雅和氏、スタジオで映像品質管理やITを担当する近藤信輝氏である。
ABEMAは多彩なジャンルをカバーする約20チャンネルを展開、24時間365日の配信を続けている。2016年4月の開局以来、5年余りでABEMAのダウンロード数は6800万を突破。WAU(Weekly Active Users)は1500万人を推移している状況である。とくに、スポーツやニュースなどライブコンテンツの人気は高いようだ。
ただ、生番組を高品質かつ安定的に届けるのは容易なことではない。しかも、最新のテレビやスマ―トフォンを利用するユーザーの期待値は上がり続けている。現在と同じ画質では、1年後のユーザーを満足させられないかもしれない。野球やゴルフなどのスポーツ配信が増えれば、これまで以上に高いクオリティーの映像配信を求められるだろう。
こうした課題意識をベースに、サイバーエージェント内でインフラ強化に向けたプロジェクトがスタートした。それが「SUPERBIRD」である。
SUPERBIRDの中核を担ったのは3人のメンバーだ。「SUPERBIRD」プロジェクトの立案者でありABEMAの開発局でコンテンツ配信を担当する山中勇成氏、3事業のインフラを横軸で統括するCIU(CyberAgent group Infrastructure Unit)のマネージャーである篠原雅和氏、スタジオで映像品質管理やITを担当する近藤信輝氏である。
生配信の品質向上目指す「SUPERBIRD」プロジェクト
「SUPERBIRD」プロジェクトは、「今」と「未来」のための投資である。
「今すぐというわけではありませんが、インターネット動画配信の流れを見れば、いずれ弊社で『4K放送を行う』という意思決定がなされる可能性があります。そう決まれば、すぐに対応できなければなりません。『SUPERBIRD』プロジェクトは画質や安定性の向上という現状の課題解決のための施策ですが、将来に向けた準備でもあります」(山中氏)
まず現状の課題について、篠原氏はこう説明する。
「従来、生番組については、『Chateau Ameba(シャトーアメーバ)』というスタジオ、または現場から直接台湾のクラウドに置かれた配信システムに伝送していました。インターネット経由なので、画像品質の低下や遅延なども起こりがちです。また、シャトーはオフィスビルにあるので、年に1度の法定停電があります。24時間365日の配信サービスに適しているとは言えません」
2018年頃から品質向上を目指した議論や検討が始まり、経営の承認を得た上で2019年初めに「SUPERBIRD」プロジェクトは本格的にスタートした。
その方針は大きく分けて3つ(※図1)。第1にインターネットから専用線への移行とデータセンター活用による中央集約化。第2に映像信号をデータに変換する専用エンコーダー機器の導入(従来は汎用マシンを用いていた)。第3に映像の品質をチェックする監視設備などの強化である。
3つの方針を具現化する上で、中核的な位置を占めるのがデータセンターである。数カ所に分散する既存スタジオとデータセンターを専用線で結び、データセンターからは高速ネットワークでクラウドに伝送する。これにより、ネットワークの安定性は大きく向上する。
そのデータセンターとして、サイバーエージェントが選んだのがブロードバンドタワーの「第3サイト」だ。第3サイトへの切り替えは段階的に進んでおり、2021年秋には移行が完了する予定だ。
「今すぐというわけではありませんが、インターネット動画配信の流れを見れば、いずれ弊社で『4K放送を行う』という意思決定がなされる可能性があります。そう決まれば、すぐに対応できなければなりません。『SUPERBIRD』プロジェクトは画質や安定性の向上という現状の課題解決のための施策ですが、将来に向けた準備でもあります」(山中氏)
まず現状の課題について、篠原氏はこう説明する。
「従来、生番組については、『Chateau Ameba(シャトーアメーバ)』というスタジオ、または現場から直接台湾のクラウドに置かれた配信システムに伝送していました。インターネット経由なので、画像品質の低下や遅延なども起こりがちです。また、シャトーはオフィスビルにあるので、年に1度の法定停電があります。24時間365日の配信サービスに適しているとは言えません」
2018年頃から品質向上を目指した議論や検討が始まり、経営の承認を得た上で2019年初めに「SUPERBIRD」プロジェクトは本格的にスタートした。
その方針は大きく分けて3つ(※図1)。第1にインターネットから専用線への移行とデータセンター活用による中央集約化。第2に映像信号をデータに変換する専用エンコーダー機器の導入(従来は汎用マシンを用いていた)。第3に映像の品質をチェックする監視設備などの強化である。
3つの方針を具現化する上で、中核的な位置を占めるのがデータセンターである。数カ所に分散する既存スタジオとデータセンターを専用線で結び、データセンターからは高速ネットワークでクラウドに伝送する。これにより、ネットワークの安定性は大きく向上する。
そのデータセンターとして、サイバーエージェントが選んだのがブロードバンドタワーの「第3サイト」だ。第3サイトへの切り替えは段階的に進んでおり、2021年秋には移行が完了する予定だ。
図1●「SUPERBIRD」プロジェクトのアプローチ。専用線・中央集約(ハブ化)、エンコーダーリプレイス、監視設備強化という3つの方針の達成を進めている
プロジェクトの要。新大手町サイト/IXに直結する「第3サイト」
スタジオなどで制作された映像を集約し、クラウドに送るためのハブとなるのが、第3サイトである。そのために各種サーバーと共に、専用エンコーダーも設置された。同時に、映像品質の管理や配信監視を担うマスターの機能もシャトーから第3サイトに移された。シャトーへの依存を減らすとともに、管理や監視のレベルアップを図るためだ。なお、シャトーの映像制作機能は今後も維持される。
では、サイバーエージェントがブロードバンドタワーの第3サイトを選んだ理由はどのようなものだろうか。そこにはいくつかの理由があったと篠原氏は話す。
「24時間365日の配信状況を常に監視するため、専任スタッフを常駐させる必要がありました。停電のない監視ルームを併設可能なデータセンターは、都内でも少ないと思います。また、当社との距離も考慮しました。やはり、近くにあった方が何かと便利です。当然、クラウドへの伝送に利用するネットワークの品質は必須条件です」
ニーズへの柔軟な対応とネットワーク品質は大きなポイントだ。第3サイトはブロードバンドタワーの「新大手町サイト」と高速の「DCI サービス」※(データセンター相互接続サービス)で直結しており、新大手町サイトはインターネットの相互接続点である「インターネットエクスチェンジ(IX:Internet eXchange Point)」と構内配線でつながっている。これによって海外クラウドとの高速、低遅延の通信を実現している。
また、第3サイトへの移行によりセキュリティーも強化された。
「シャトーには社員なら誰でも入れましたが、第3サイトでは権限が厳格に管理されています。以前よりも安心感が高まりました」と篠原氏。また、近藤氏は映像の管理・監視レベルも高まったと話す。
「映像を監視するために、以前はインターネット回線を使っていました。その回線は監視以外の目的でも使われていたので、監視している映像が乱れたときに原因を特定するのが難しかった。他のユーザーの利用が増えて回線が圧迫され、監視している映像が乱れた可能性もあるからです。第3サイトに移行してからはそうした問題はなくなり、トラブル時の対応もスムーズになりました」
※DCI サービス:10Gbps/100Gbpsのブロードバンドタワーおよびパートナーのデーターセンター間の回線を安価かつ短納期で提供。
では、サイバーエージェントがブロードバンドタワーの第3サイトを選んだ理由はどのようなものだろうか。そこにはいくつかの理由があったと篠原氏は話す。
「24時間365日の配信状況を常に監視するため、専任スタッフを常駐させる必要がありました。停電のない監視ルームを併設可能なデータセンターは、都内でも少ないと思います。また、当社との距離も考慮しました。やはり、近くにあった方が何かと便利です。当然、クラウドへの伝送に利用するネットワークの品質は必須条件です」
ニーズへの柔軟な対応とネットワーク品質は大きなポイントだ。第3サイトはブロードバンドタワーの「新大手町サイト」と高速の「DCI サービス」※(データセンター相互接続サービス)で直結しており、新大手町サイトはインターネットの相互接続点である「インターネットエクスチェンジ(IX:Internet eXchange Point)」と構内配線でつながっている。これによって海外クラウドとの高速、低遅延の通信を実現している。
また、第3サイトへの移行によりセキュリティーも強化された。
「シャトーには社員なら誰でも入れましたが、第3サイトでは権限が厳格に管理されています。以前よりも安心感が高まりました」と篠原氏。また、近藤氏は映像の管理・監視レベルも高まったと話す。
「映像を監視するために、以前はインターネット回線を使っていました。その回線は監視以外の目的でも使われていたので、監視している映像が乱れたときに原因を特定するのが難しかった。他のユーザーの利用が増えて回線が圧迫され、監視している映像が乱れた可能性もあるからです。第3サイトに移行してからはそうした問題はなくなり、トラブル時の対応もスムーズになりました」
※DCI サービス:10Gbps/100Gbpsのブロードバンドタワーおよびパートナーのデーターセンター間の回線を安価かつ短納期で提供。
図2●「SUPERBIRD」の目的とABEMAの生配信に関するPJ(プロジェクト)の解説図。CDRはContent Distribution Roomの略で、専用回線を集約する施設のこと。この「SUPERBIRD」プロジェクトの要となるCDRはブロードバンドタワーの第3サイトに設置された
図3●サイバーエージェントの広域接続における、ブロードバンドタワーの都内データセンター網の役割。第3サイトはブロードバンドタワーの「新大手町サイト」と高速の「DCI サービス」によって直結。新大手町サイトは「インターネットエクスチェンジ」と構内配線でつながっている。これにより、海外クラウドとの高速、低遅延の通信を実現している
不確実性の高い時代、選択肢を増やす未来への投資
「SUPERBIRD」プロジェクトの完了が直ちにABEMAの映像の大幅な高品質化につながるわけではない。コンテンツ制作を担うスタジオなどの前工程、クラウドから端末に至る後工程を含めてすべてがレベルアップすることで品質は向上するからだ。
実は、前工程のプロジェクトも進行中である。最終的には、後工程に当たるクラウド上の配信システムをリニューアルすることで、同社がコントロール可能なプロセスすべてが増強されることになる。
今回の第3サイトへの移行により、クラウドへの伝送段階がボトルネックになるリスクはほぼ解消された。「SUPERBIRD」プロジェクトという将来への投資を、ユーザーが実感できる日は遠くない。
また、「SUPERBIRD」プロジェクトによって、クラウドの選択肢が広がったことも確かだ。現在は台湾のクラウドに伝送しているが、国内に戻す可能性や別のクラウドプラットフォームが適していると判断される可能性もある。不確実性の高い時代、こうした選択肢を持つことは重要だ。篠原氏は「第3サイトをハブとして活用しているので、将来クラウドを切り替える必要が生じても対応しやすくなりました」と語る。
映像の高精細化への取り組みの一方で、効率化や生産性向上に向けた施策も重要である。テクノロジーの活用がそのカギを握る。今後の方向性としてはAI(人工知能)の導入も考えられる。
「例えば、映像データをAIで読み取れば、異常映像の検出などを効率化できるかもしれません」と山中氏。人手に頼っている部分をテクノロジーで肩代わりすれば、より高付加価値な領域に集中できる。
山中氏のアイデアは一例にすぎないが、今後も同社は先端技術を用いて、ABEMAのさらなる強化を進めていく。そのパートナーがブロードバンドタワーである。
「ブロードバンドタワーとは10年以上のお付き合いです。人や技術力、サービスなどトータルなサポート力に信頼を置いており、今後も一緒にチャレンジしていきたいと考えています」と篠原氏。ブロードバンドタワーはその期待通り、ABEMAの成長に伴走しつつ、強力なサポートを続けていく考えだ。
実は、前工程のプロジェクトも進行中である。最終的には、後工程に当たるクラウド上の配信システムをリニューアルすることで、同社がコントロール可能なプロセスすべてが増強されることになる。
今回の第3サイトへの移行により、クラウドへの伝送段階がボトルネックになるリスクはほぼ解消された。「SUPERBIRD」プロジェクトという将来への投資を、ユーザーが実感できる日は遠くない。
また、「SUPERBIRD」プロジェクトによって、クラウドの選択肢が広がったことも確かだ。現在は台湾のクラウドに伝送しているが、国内に戻す可能性や別のクラウドプラットフォームが適していると判断される可能性もある。不確実性の高い時代、こうした選択肢を持つことは重要だ。篠原氏は「第3サイトをハブとして活用しているので、将来クラウドを切り替える必要が生じても対応しやすくなりました」と語る。
映像の高精細化への取り組みの一方で、効率化や生産性向上に向けた施策も重要である。テクノロジーの活用がそのカギを握る。今後の方向性としてはAI(人工知能)の導入も考えられる。
「例えば、映像データをAIで読み取れば、異常映像の検出などを効率化できるかもしれません」と山中氏。人手に頼っている部分をテクノロジーで肩代わりすれば、より高付加価値な領域に集中できる。
山中氏のアイデアは一例にすぎないが、今後も同社は先端技術を用いて、ABEMAのさらなる強化を進めていく。そのパートナーがブロードバンドタワーである。
「ブロードバンドタワーとは10年以上のお付き合いです。人や技術力、サービスなどトータルなサポート力に信頼を置いており、今後も一緒にチャレンジしていきたいと考えています」と篠原氏。ブロードバンドタワーはその期待通り、ABEMAの成長に伴走しつつ、強力なサポートを続けていく考えだ。
- 企業名
- 株式会社サイバーエージェント
https://www.cyberagent.co.jp/
- 設立
- 1998年3月18日
- 所在地
- 東京都渋谷区宇田川町40-1 Abema Towers
- 事業内容
- メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業